アジリティという単語は敏捷性を表す言葉として多く利用されています。

しかし、アジリティとはさまざまな要素から構成されるため、「ラダードリルではアジリティは高まらない」という考えも主張されてきています。

アジリティの定義

アジリティの解釈は様々ですが、私はNick Winkelman氏なども定義している「選手+タスク+環境の三つの要素によってアジリティは構成される」という考えが気に入っています。

参考: Robertson Training Systems: Four Elite Speed Seminar Takeaways

選手とタスクの要素によって「方向転換」は構成されます。あらかじめ動きが決まっているムーブメントトレーニングのようなものが想像しやすいかと思います。

しかし、ここには「ゲーム状況の認知」であったり、「判断・反応して動く」といった「環境」が関わる要素は多く存在しません。

トレーニングしたい能力は環境の要素が存在しない「トレーニングにおけるアジリティ」ではなく、環境の要素が存在する「試合におけるアジリティ」なのであれば、環境の要素をトレーニングにも入れ、認知やそこからの反応・判断が必要となる「リアクティブアジリティ」をトレーニングする必要があります。

方向転換:選手+タスク
例)あらかじめ動きが決まっているラダードリルやムーブメントトレーニング
リアクティブアジリティ:選手+タスク+環境
例)何かに反応して動く必要があるアジリティ・ムーブメントトレーニング

ラダードリルは何を向上させるか?

お気づきの通り、ラダードリルには「状況の認知」「判断・反応して動く」という要素は基本的には存在しません。また、タスクの要素においても実際の競技中での動きとしてはあり得ない動きが多いかと思います。

しかし、ラダードリルは選手・タスク・環境の「選手」の要素に強く影響を与えることが出来ます。

これを理解するには小脳の理解が必要になります。

小脳と変換運動能力

 

小脳は脳の中でも動作に深く関わる部位です。運動における小脳の役割は下記のようにABCで表されます。

Accuracy: 正確性

Balance: 姿勢とバランス

Coordination: コーディネーション

A, B, Cの全ての要素はあらゆるスポーツにおいて必要ではないでしょうか?

スポーツにおける「動きの硬さ」「ぎこちなさ」は小脳の不活性の代表的な症状です。「運動神経が悪い」という言葉で片付けられますが、機能的に考えればそこには小脳が関わっているということです。

そんな小脳ですが、ラダーとの関わりでイメージしやすいのが「変換運動」です。

変換運動とは下記の動画のような同じ動作を繰り返し行う運動のことを指します。

3:24〜のような手のひら回内/回外テストは変換運動能力、小脳機能をテストするために用いられます。変換運動能力が低下すると運動のリズムが乱れたり、スムーズに運動が遂行出来なかったりします。

一度ブログを読むのを止めて、出来るだけ早くかつ、音を立てるように手のひらの回内/回外を10秒間行ってみてください。同じ面を連続して叩いてしまったり、スムーズに運動が継続出来ない等の問題が出現すると思います。

ラダーは主に足での運動になりますが、ラダーで足の動きがグチャグチャになってしまったり、運動をスムーズに遂行出来ないのは小脳の不活性が一つの大きな要因です。反対に考えればラダードリルのように、足部の緻密かつ高速な運動を行うことは小脳に強い刺激を入れ、土台となるコーディネーション能力にアプローチすることが出来ると私は考えています。

まとめ

ラダートレーニングによって足を細かく高速に動かす、それによって得られる刺激、その刺激によって向上する小脳の機能は方向転換においても、リアクティブアジリティにおいても実は土台となる要素・能力です。

イコール関係ではありませんが、実際にラダーが不得意な選手はリフティングや縄跳びのような緻密なコーディネーションが求められる運動が苦手な傾向があるのではないでしょうか?特に子どものトレーニング指導においてはわかりやすいかと思います。

 

もちろん、タスクであったり環境のことを考えれば、アジリティが直接的に高まるわけではありません。しかし、決して「ラダーはアジリティに意味はない」と言えるものではなく、選手によってはアジリティを高めるために必要な場合もあると思っています。

私は以前に「ラダートレーニングなんて無意味だ」と考えていた時期がありましたが、身体のことを幅広く学んでいくにつれ大事なのはその人に合っているかどうかということ。無駄なトレーニングなどは存在せず、存在するのはトレーニングにおける優先度だと気付きました。

ラダー、縄跳び、コーンドリブル、リフティング、実際の試合を考えれば必要のない運動でも、その選手の能力を高める上では必要になるケースもあるかと思います。

 

下記の動画の3:47〜のようなその場で出来るだけ足を速く動かすといったドリルは特に変換運動にフォーカスでき、小脳活性を出来るかと思います。この速さが必要かはわかりませんが、速くなる意識は必要だと思いますので、是非参考にしてみて下さい。

 

Twitterでトレーニングの情報発信等も始めました。
お気軽にフォローよろしくお願いします。

おすすめの記事