アスリートのトレーニングでは「動きの質」を高めることが大きな目的の一つとなります。サッカー等の複雑性の高いスポーツにおいても、動きの質が高まることで、スポーツで求められる動きの強度が高まったり、スキルやテクニックの習得・発揮においても有益になるためです。

私がアスリートの指導で大事にしていることの一つに、「少ないトレーニング種目を行うのではなく、多くの種目を行う」といったことがあります。言い換えるなら、エクササイズやトレーニングの動きに多様性を持たせることです。

多様性によってアトラクターの発現を促進する

トレーニングに多様性を持たせるメリットとして、「アトラクターの発現を促進出来る」ことが挙げられます。

アトラクターとは「ある動作において変動性が許容されない安定した要素」のことです。例えば、減速時のヒップヒンジの動きは、減速動作を高い質で行うために重要な要素であり、アトラクターです。

スポーツの各局面において、アトラクターとされる要素は多々ありますが、その中でもヒップヒンジであったり体幹部や下腿のアライメント、足の接地位置などはアトラクターとされることが多い箇所かと思います。

反対に、「ある動作において変動性が許容される不安定な要素」はフラクチュエーターと呼ばれ、腕の位置や動きがそれに当てはまることが多いかと思っています。

 

減速局面で言えば、「減速時に腕の使い方(フラクチュエーター)はいろいろあってもいいけど、ヒップヒンジの動きとか体幹アライメント(アトラクター)はいろいろあってはダメ」ということです。

下記の動画はクリスティアーノ・ロナウド選手のムーブメントトレーニングです。自由度の高い腕の使い方があるからこそ、体幹部のアライメントが保たれていたり、力の出力方向などが適正化されている一例かと思います。

この投稿をInstagramで見る

 

Cristiano Ronaldo(@cristiano)がシェアした投稿 -

 

アトラクターの発現を促すには「多様性」が重要です。例えば、減速動作のためにヒップヒンジを鍛える際に、ルーマニアンデッドリフト(RDL)だけを行うのではなく、スタッガードポジションや片脚であったり、片手に重りを持って行うという「多様性」を持たせることで、スポーツのような複雑かつ不安定な状況下での減速局面においても「ヒップヒンジ」というアトラクターの発現を促すことに繋がります。

この考えはいわゆるウェイトトレーニングのみでなく、動作学習のためのコレクティブエクササイズから、プライオメトリクスやムーブメントトレーニング、スキルトレーニングや戦術理解においても一つ参考になる考えかと思います。

「トレーニングは上手で高重量も扱えるけど、フィールドでそれが発揮されない」「練習では上手くできるけど、試合では上手く出来ない」、これらはスポーツにおける「複雑性」という観点が欠けており、このアトラクターとフラクチュエーターという考えによって、そこにあるギャップが繋がれるのでは?と個人的には感じています。

 

それぞれの円が重なる中心部分を色濃くすることがアトラクターの発現を促進、ひいてはトレーニングで得られる要素をより多くパフォーマンスに転移する為に必要ではないかと思っています。

まとめ

少ない種目を集中して行うことは過剰なトレーニングへの適応というデメリットもあります。筋力アップや筋肥大という面では非常にメリットが大きいですが、競技練習とのバランスによっては身体がトレーニングに適応しすぎることで、モビリティや動きの柔軟性が失われたり、トレーニングの効果がパフォーマンスへ転移しにくいということもあるかと思っています。

しかし、対象者によっては少ない種目を集中して行うことがアトラクターの発現促進に貢献することもあり得ます。トレーニング経験が乏しかったり、絶対的な筋力が不足しているアスリートであれば、種目数を限定し、説明をしっかりと行いながらトレーニング指導を行っていく方がベターなこともあるかと思います。

何事もそうですが、目的や考え方次第と感じます。私も様々な考え方に触れ、多様性を身に付けたいと思います。

 

私はアトラクターに関して「発現を促進」という表現を用いましたが、本来は「学ぶ」「掘る」などの表現が適切かもしれません。ご注意下さい。

 

Twitterでトレーニングの情報発信等も始めました。
お気軽にフォローよろしくお願いします。

おすすめの記事