スポーツ観戦が趣味で、さまざまなスポーツをDAZNやテレビ等で観ることがあります。
選手の細かい動きを分析等はしないのですが、やはりトレーナーという仕事柄なのか、選手の動きが気になりいろいろ考えることがあります。
その中の一つが「姿勢」です。
決してイコール関係では無いですが、パフォーマンスが高い選手には姿勢がキレイであったり、動きがキレイだなーといった印象を受けることが多いかと思います。
(何をもって姿勢がキレイというのはさておき)
本日はそんな「姿勢とパフォーマンス」について少し考察していきたいと思います。
姿勢と動作に関わる要素
姿勢とは重力に対してバランスをとっている時の身体の状態です。
基本的には立ち姿勢のことを指すことが多いですね。
スポーツにおいて姿勢は「動作の出発地点」だと言われることがありますが、それは何も「立ち姿勢から動くから」といった理由で出発地点なのではないと私は思っています。
姿勢に関わる要素として筋肉が長いor短いといった話になりがちですが、そもそもの骨格であったり身体の栄養状態や感覚器の機能、精神状態等も深く姿勢に関わります。
例えば、視覚機能や咬合に何かしらの問題があれば頭部は前方に位置しやすくなりますし、その他の感覚器に関しても自分と外の世界を明確に区別するために存在しているものであり、感覚器に機能不全があれば身体は危険を感じ、交感神経の賦活化が起こり、脊柱全体が伸展するなどの姿勢に対して変化を起こします。
そして、これらは姿勢だけでなく動作そのものにも関わります。
つまりは姿勢がキレイ=動作に必要な最低元の要素はクリア出来ている、動作の出発地点に立てている、と考えることも可能です。
また、動作中の姿勢に関して無視出来ないのが「小脳」です。
小脳は前庭や固有感覚からの情報を受け取って、運動の際に筋肉の緊張を調整をしたり、姿勢の維持に関わる働きを担っています。
小脳は運動制御や運動学習にも深く関わる部位であり、大脳から企画された運動と実際の運動との動きの差をフィードフォワード制御を用いて修正する仕事も行っています。
また、緻密な動作のコントロールも司るため、スポーツ等での動きの硬さであったり、バランス能力が低い、細かい動きが苦手、頻繁につまづく、物体との距離を図るのが苦手といった問題は小脳の不活性であったり機能不全が一つの要因として疑われます。
(ちなみにこれ、自分がまさしく全て当てはまります。お恥ずかしながら。)
つまり、小脳に問題があれば「動作中の姿勢(パフォーマンス)」に大きく影響が出ると言うことです。
スポーツにおける姿勢の考え方
姿勢は「身体状態」と「周囲環境」が相互した結果です。
特に動作中やスポーツ中の姿勢はこれが明らかです。
サッカーで例を挙げると、相手や味方の状況や位置、ボールの位置、得点差、グラウンド状態、戦術など数多くの要素が姿勢や動作に関係します。
立ち姿がキレイな俳優やモデルに慣れないスポーツをさせたとこで、姿勢や動作が崩れるのは想像に容易いかと思います。
では、サッカーをはじめとする複雑性の高いスポーツにおいて、動作中の姿勢を改善するにはどうすればいいでしょう?
筋骨格系や感覚器に問題が少ないという前提条件をクリアしているのであれば、スポーツの経験を実際に積むことが大きなウェートを占めるのではないかと思います。
戦術の理解度や連携面を高め、チームとして成熟すれば無理な姿勢でボールを扱うことは減るでしょうし、相手より先に目的に応じた動作をスタートすることが可能になります(相手を崩す側に回る)。
経験値があればあるほど、自分が不利な体勢で動く回数は減るはずです。
もちろん、フィジカルという個人(自分)の要素を高めることも動作中の姿勢を高めることに繋がりますが、多くのスポーツにおいては自分以外の選手や環境といった要素を無視することは出来ません。
以前はフィジカルやテクニックといった個人における部分の要素を高めることが重要だと思っていましたが、やはりチームスポーツ等においてはここは外せませんし、理解しておくことは重要です。
あくまでチームスポーツはチームスポーツであり、個人の集まりではないということです。
これはチームスポーツではないテニスやバドミントン等でも考え方自体は同じかと思います。
プレー中の姿勢は自分だけでなく、相手や状況との関係性によって決まります。
姿勢や動作は筋骨格系や感覚器以外にも多くの要素が関係したあくまで「結果」と言うことです。
まとめ
立位姿勢で明らかな問題があれば、その問題に対して介入する必要はあるかと思います。
ただ、それは姿勢という結果に対してアプローチをするのではなく、あくまで問題に対して介入することが重要です。
脊柱が伸展しているから腹筋群やハムストリングスをトレーニングするのではなく、なぜ伸展しているのか?を考え、その問題へとアプローチすることが重要です。
また、冒頭に述べた通り、立位姿勢が崩れているからといってイコール関係でパフォーマンスが低いではありません。
「姿勢」という言葉の定義が曖昧であったり、その評価方法に関してもコンセンサスを得られたものが確立されていないため、パフォーマンスとの関係性を示すことは難しく、あくまで一つの要因であると考えておくことが重要かと思います。
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