近頃は一般書を見ていても「腹腔内圧」や「腹圧」について書かれていることがあります。
一般書でもとても勉強になることも多いですし、参考にすることもあります。
本日はそんな「腹腔内圧」について考えていきたいと思います。
腹腔内圧とは?
腹腔内圧とはその言葉通り、「腹腔内の圧力」です。
その腹腔内圧は、横隔膜・腹筋群・骨盤底筋群の働きによってコントロールされています。
横隔膜が下降し、腹筋群と骨盤底筋群が共縮することにより腹腔内圧は上昇します。
腹筋が緩んだ状態で横隔膜が下降しても腹腔内圧はそれほど上昇しません。
一般的に腹腔内圧と言いますと、「腰椎骨盤帯の安定化のためのメカニズム」と認識されていることが多いかと思います。
そこから転じて、
・腹腔内圧を高めることで腰椎骨盤帯が安定し、慢性的な腰痛を改善する。
・腹腔内圧を高めることで腰椎骨盤帯が安定し、姿勢が改善する。
などと考えられていることがあります。
(両論においてさまざまな考え方があるかと思います)
そんな腹腔内圧ですが、運動の際にはどのようにして腰椎骨盤帯の安定に関わっているのでしょうか?
少し極端な例えになってしまいますが、歩いているときとデッドリフトをしているときを比較しながら考えてみましょう。
腹腔内圧と運動
まず、高重量のデッドリフトを行なっているときを考えると、動作中に腹腔内圧は強く上昇する必要があります。
腹腔内圧を高めることで、腰椎骨盤帯を安定させ、腰椎骨盤帯に付着する筋群が安定して力を発揮できる状態を作ることが出来ます。
また、腰椎を過度に伸展させて構造的に腰椎を安定させるのではなく、筋の張力・腹腔内圧により腰椎を安定させることで、腰へのストレスも軽減することが可能です。
この動画では、前半3レップは腰椎(脊柱全体)を伸展させることにより、腰椎骨盤帯の安定化を図っており、後半3レップは腹腔内圧を高めることにより、腰椎骨盤帯の安定化を図っています。
(前半3レップでも腹腔内圧は上昇しているかとは思いますが)
デッドリフトのような息む必要がある運動の際に腹腔内圧が全く高まらないとしたら、バーベルを地面から持ち上げること自体も不可能でしょう。
では、歩いている時はいかがでしょうか?
デッドリフトの際は脊柱や胸郭は一つの塊のように固定されていましたが、歩いている時は脊柱や胸郭は小さい動きかもしれませんが、柔軟に動いていることが観察出来ます。
(動画は一例なので、さまざまな方の歩行を観察して頂ければよりわかりやすいかと思います)
しかし、仮にここでデッドリフト並みに腹腔内圧を高めたとしたら、いかがでしょうか?
腰椎骨盤帯だけでなく、脊柱全体や胸郭の動きも制限されて正常な歩行が困難になるかと思います。
腹腔内圧を強く高める運動を行う際は、腰椎骨盤帯だけでなく脊柱や胸郭の動きも制限されます。
もちろん、腹腔内圧は必要です。咄嗟に踏ん張る時、何かにぶつかる時、重たい物を運ぶ時など、腹腔内圧を使わないと運動が実行できなかったり、怪我をしてしまうことでしょう。
しかし、安静時や歩行などの脊柱の動きが求められる運動を行う際には、腹腔内圧の上昇は最低限に抑え、筋の張力による腰椎骨盤帯の安定化も考える必要があります。
スポーツ時も同じです。
つまり、腹腔の「圧力=pressure」による腰椎骨盤帯の安定なのか、筋の「張力=tension」による腰椎骨盤帯の安定なのかを区別する必要があります。
二者択一ではありませんし、両方が必要な場面が多いかと思います。だからこそ、共通する要素の理解は不可欠です。
ウェイトトレーニングを適切に行うために、腹腔内圧を高めるエクササイズやトレーニングをする。トレーニングのためのトレーニングであるかもしれませんが、ウェイトトレーニングを適切に実行するためには必要な要因の一つであると思います。
しかし、腹腔内圧を高めることにより姿勢が改善する、というのはもしかすると少し安易な表現かもしれません。
(腹腔内圧を高めるエクササイズのその他の要因により結果的に姿勢改善、ということは十分に考えることが出来ます)
腹腔内圧は高ければ良い、ってものではありません。場面/局面による使い分けです。
まとめ
デッドリフトと歩行は極端な比較かもしれませんが、それに絡めて腹腔内圧への必要性について少し書いてみました。
トレーナーっていうとどうしてもウェイトトレーニングを指導することが多いので、腹腔内圧を意識してしまいますが、安静時や軽い運動時の際には腹腔内圧だけでなく、シンプルに筋の張力等も腰椎骨盤帯の安定化に貢献することを忘れないようにしないといけないですね。
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