自己組織化という現象をご存知でしょうか?

スポーツパフォーマンスにおいて、とても重要視されている概念の一つで、ラグビー日本代表がW杯で南アフリカ代表に勝利した際にスプリントコーチだったFrans Boschコーチも大事にしているコンセプトの一つとして有名です。

自己組織化とは?

自己組織化とは一体どのような現象でしょうか?Wikipediaによりますと、

自己組織化(じこそしきか、英: self-organization)とは、物質や個体が、系全体を俯瞰する能力を持たないのに関わらず、個々の自律的な振る舞いの結果として、秩序を持つ大きな構造を作り出す現象のことである。

 

自己組織化はよくアリの行動や巣に例えられます。

多くのアリは秩序だった行動をします。餌を列になって運んだり、巣を協力して作ったり、死んだ仲間の墓を作ったり。こういった集団での行動・作業がどのようにして行われているのかは、アリを一匹隅々まで調べてみても理解することが出来ません。

アリの行動は一匹のアリによって作られるモノではなく、多数のアリによって作られます。つまり、一匹のアリを解剖しても、アリの行動がどういったシステムでオーガナイズされているかはわかりません。

ちなみにアリの巣は女王アリが命令を出していたり、働きアリ達が自ら企画して作っているわけでももちろんなく、アリのお尻から出るフェロモンによって巣を作ったり、餌を運ぶといった秩序ある複雑な働きを可能にしているそうです。

上記のような個々の行動によって、秩序ある働きがオーガナイズされる現象が自己組織化です。

 

この考え方は人間の動きや、スポーツパフォーマンスにおいても同様です。

例えば、人間の動きは筋力+柔軟性+体幹の強さ+といった要素によって起こるわけではありません。

環境と個人との相互作用による原動力が、情報処理され、動きが起こり、コーディネーションとして成り立ちます。

下記は自己組織化を表現したNewell's Constraints Modelです。

・タスク:歩く、走る、投げる、蹴る等の運動の課題

・外部環境:天候や路面環境以外にも、スポーツの場合は相手選手の位置や試合の状況等

・個人:自分、味方、相手選手の存在

氷の上は普通の歩き方では歩けません。また、単なる真っ直ぐな道でも、地上から100mの位置であれば、足は震えます。

サッカーなら練習で蹴るPKと、観客8万人の前で蹴るPKでは成功率も変化します。また、練習なら正確にボールを蹴れるが、試合では練習のようなパフォーマンスを発揮出来ないという選手もいるかと思います。

これらは自らの能力だけでパフォーマンスの全てが決まるのではなく、環境や他人によってパフォーマンスが制約されているという例です。試合でパフォーマンスが発揮できないのですら、自分がボールを蹴るのが下手だからだけでは無いということです。

個人のコンディションや能力、環境、相手選手や味方選手、これらの複雑な相互関係の結果が動きであったりパフォーマンスとして現れます。

環境への適応力を高めるために

サッカー界では「サッカーはカオスである」と頻繁に言われますが、サッカーを含む多くのスポーツではさまざまな要素がパフォーマンスに関連するため、練習通りにパフォーマンスが発揮出来ないということがよくあるかと思います。

そのような不安定な状況下でしっかりをパフォーマンスを発揮するにはどうすればいいでしょうか?

 

チーム全体のパフォーマンスではなく、個人のアスレティックなパフォーマンスを考えた際には選手の「適応力」という能力が挙げられると思います。

適応力とは、様々な相手の動きであったり、ボールの動き、試合の状況や環境の変化などに柔軟に対応して身体を動かす能力と私は表現しています。本来は単に「身体動かす」能力ではなく、運動・スポーツの経験値や予測能力なども多分に含まれますが、そこは私の仕事では介入が難しい要素だと思っています。

試合という不安定な環境に適応し、課題を遂行する為に多くの動きの選択肢を持つこと、言い換えると「運動の多様性」が大事になると考えています。

 

簡単な例ですが、サッカーで「10m離れた味方にパスをする」と課題を考えた際に、「10mのパスは右足でしか出来ない」という選手と「10mのパスは右足でも左足でも、多少変な蹴り方でも出来る」という選手では、後者の方がさまざまな状況下においても「10m離れた味方にパスをする」という課題を遂行出来るのではないでしょうか?

上記はパスという一例ですが、さまざまな状況や課題でも同様です。動きの引き出しの豊富さ、つまりは運動の多様性が予測出来ないかつ不安定な状況に適応し、課題を遂行するための能力となります。運動の多様性を培うには何十回、何百回と行なってきた慣れたトレーニングや練習ではなく、多様性のあるトレーニングを行うべきです。

 

運動の多様性に関しては下記の記事もご参考下さい。

まとめ

私はこの「自己組織化」という現象を知ることで、パフォーマンスの考え方であったり、トレーニングの考え方がとても整理されました。

この考えは動きを基にしたトレーニング、「Movement Based Training」を考える上では一つ大事な要素であるとも思っていますし、アトラクターやフラクチュエーションという考え方との相性も良いと思います。

「筋肉ではなく動きを鍛える」という考えも昔は少し小馬鹿にしていましたが、今ではいろいろと繋がっていくことを感じます。

この記事が少しでも皆様のご参考になれば幸いです。

 

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